シングルマザーの勇気と情熱

「母として」から、「自分らしく」へ。2019年、気球に乗り換え、さあ出発!

NK細胞増殖作戦

先日、弟のバースデーに「お誕生日おめでとう」とメールを送ったら、「ありがとう。40+〇歳になりました」と返事がかえってきて、思わず飲みかけのコーヒーにむせてしまった。私が大学に入ったとき、まだ小学生だったのに……いくつになっても(尊敬もする反面)「かわいい」といった気持ちが抜けないのは、一番印象的だったころ(弟の場合、半ズボンで雪だるまをつくっていた時代)で〈印象年齢〉が停止してしまっているからだろう。

わが家のJCツンデレ娘もしかり。元伴侶が 身長2m 近くある大きな人だったため、中学生にして日本人女性の平均より大きなさゆりを見下ろすまでになってしまったが、さゆりの心の鏡にうつる姿はいまだ、保育園児サイズのままである。

まだおむつがとれて間もないある日のこと——部屋を掃除していたら、異臭を放つ白いビニール袋が出てきた。中をのぞくと得体のしれない茶色い物体が……「何だこれ?」と思わず鼻をつまみながら捨ててしまったが、翌日、仕事帰りに保育園にかけこむと、ローテーションでしばらく姿の見えなかったベテラン保育士さんが出てきて、

「テラスちゃんママに話したくて……先週、みんなで手をつないで『公園に秋を見つけに行こう』ってお散歩に出たら、テラスちゃんが色つや美しいまま地面に落ちた椿の花を『これ、すっごくきれいだからママにあげるの~』って一所懸命ひろいあつめてて……なんだかジーンときてしまいました」と告げられた。

あ、あの「茶色い物体」の正体はそれだったのか……と、青くなるさゆり。家へもどり、足先までくるまれる米国製のカバーオール・パジャマに着替えてホットミルクを飲むテラスに、あらためて保育士さんからの話を伝えて礼を述べると、「そう、とってもきれいだったの。どっかいっちゃったけど、またとってきてあげるね」とにっこりしていた。

その娘もめでたく反抗期をむかえ……ツンツンとんがっているときは「あたりがキツイなぁ」と思ったりするのだが、1人でテレビを見ている時など、「鈴を転がすように」とにかくよく笑う。イヤフォンつけて勉強中も、何を聴いているのか、とつぜん笑いだす。夢の中でも楽しいことがあるらしく、暗闇のなかでとつぜん「アハハハハハ」と大笑いされ、明け方起こされてしまうことも……

昭和期の中頃、〈笑い袋〉というグッズが流行ったことがある。布製の袋に内蔵されているボタンを押すと、思わずつられてしまうような笑い声が延々響いてくる、というおもちゃなのだが、まるであれと暮らしているような気分。ふと心が落ちこんだとき、寝ざめのよくない夢を見たとき、はたまたなかなか寝つけない夜も……この一発でなんとなく楽しくなり、本当にNK(ナチュラルキラー)細胞といったものが増殖してきそうなまでに回復してしまう。

そのお返しに……と、生来の天然ボケパワーを発揮し、ツンツンモードの〈笑い袋〉くんにスカッとした一撃を食らわそうと機会をうかがっていたさゆり——すると週末、絶好の機会が訪れた。塾からもどり、早夕食をとってまた塾へもどるというスケジュールのなか、カリカリモードでテレビを凝視したまま無言で箸を動かすテラス……ひと皿だけしかないおかずが足りないといわんばかりにひじき煮の容器を勢いよくあけたとたん、中身がはじけ飛び、黒いかたまりがさゆりの白いルームウェアの足のつけ根あたりにもさっと着地した。

「……なんか、エッチっぽくない?」

箸をとめ、自分の下腹部をチラッと見て放ったさゆりの一言で、ホビットの家は大爆笑の渦に——。肩を震わせながらテラスが出かけてしまったあと、なんとなく心弾む思いで家事のつづきにもどったさゆりの脳裏に浮かんだのは、寒空に灯をともすように咲く、あでやかな椿の花だった。

 

 

 

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びっくり 笑い袋 セット 大小

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