column【通院治療に必要なもの】
体に異変を感じてから10カ月――検査つづきでまだ本格治療には至っていないが、日本での通院治療についてここまでで感じたこと、必要だったものについてまとめておきたい。
1.服装
サンフランシスコで妊娠・出産のほか、怪我や手術等で多々病院通いをした経験を経て帰国したとき、都心の病院に通う人々が「なんとまあ、きれいにしてくること!」と驚いたのを覚えている。「きれいにしてくる」とは、かならずしも=stylish という意味ではなく、「かしこまった」「きちんとした」という意味。
忘れもしない、G病院から巣立ち、米国西海岸のUCSF通いを経てG病院へ出もどってきたとき、全身OLD NAVY スタイルのカジュアルなさゆりを見て、主治医のP医師は「……ずいぶんアメリカナイズされましたね」と絶句していたが……。
場所柄ゆえ、通勤の合間に通院する人も多いかと思うが、それでもとくに女性の場合、わずかな工夫で診察や検査の際に着脱しやすく、その分ほかの人々の待ち時間も減らすことができる、かつ病院で長時間快適に過ごせるという改善点は多々ある。昨今かなり「日本化」してきた自身への反省もこめ、通勤服ならぬ「通院服」につき気づいた点をご紹介したい。
〈おすすめ通院服〉
1)基本的にワンピースは避け、上下に分かれている服を選ぶ
2)上半身は、腕や裾部がまくりやすいもの選ぶ
3)下半身は、基本的にミニやタイトスカートは避け、ズボンの場合は下にストッキングやタイツをはかない(←診察や検査の際に「足首を出して」と言われたとき、ややこしいことになる)。インナーとして防寒対策が必要な場合は、スパッツ+靴下がおすすめ。
4)アクセサリーはひとまとめにしてポーチに入れておき、診察や検査が終了してから装着する(いちいち着脱していると、時間もかかるし紛失のおそれが否めない)
5)ズボンのジッパーからインナーにいたるまで、金属がついたものは避ける(わずかでも入っていると、検査の際、検査着に着替えなければならない手間がふえる)
この点、さゆりがもっとも病院向きだと思ったのが、ユニクロのエアリズムブラタンクトップ。診察の際、「上を脱いで」といわれても下着っぽくないため気にせず服を着脱でき、検査から検査へ渡り歩く際、こまごまとした下着を持ち歩いて紛失してしまう危険性も避けられる。何より、ワイヤーが入っていないためそのままレントゲンもとれる優れものである。
6)さらに冬の場合、厚着をしていかないこと。病院という場所は温度を高めに設定している場合が多いため、検査から検査へ移動すると汗まみれになってしまう。薄めの服装+厚手のコートが望ましい。
7)病院には靴音が気になる人が多くいたり、また麻酔を使用した後はフラつくことがあるため、ヒールは極力さけたい。着脱に時間のかかるブーツも、通院には不向きといえる。
2.携帯品
そこで、肩にかけられる大きめのエコバッグを1つ携帯し、さらに病院ではきかえる靴を持参して病院に到着したらはき替えてしまい、コートや傘、外履き用靴一式をその袋に入れて持ち歩くことをおすすめしたい。病院によっては、入り口付近にコインロッカーを整備しているところも増えてきたため、そのバッグを丸ごとロッカーに入れておくと忘れもの回避にもなって便利である。
〈おすすめ通院携帯品〉
1)肩にかけられる大きめのエコバッグ
2)病院用の靴(とくにレインシューズやブーツをはいて行く日は必需品)
これにつき、おすすめはこちらの靴。MERRELLはもともと登山靴のメーカーの商品なので履き心地がよく、足になじみ、靴音がせず、長時間はいていても疲れない。なによりサンダル型なのにかかとが浮かず、着脱時にしゃがんだり、かかとを押しこまなくても足になじむ点が高評価。
3)折りたたみ傘と傘入れ
出がけにたくさん降っていると、つい長い傘をもちたくなるが、病院備えつけのビニール袋に入れてもちあるいていると、いたる所へ忘れてくる可能性が高くなる。そこで、通院時は折りたたみ傘をさすよう心がけ、病院内では昨今流行りの傘ケースに入れてコートと一緒ににエコバッグで持ち歩くと便利。
[rakuten:newton-style:10035545:detail]
4)本
病院はとにかく待ち時間が長いため、検査つづきの日にはとくに文庫本を2-3冊持ち歩いていた。電子ブックでもよいが、携帯電話は一応「貴重品」のため、検査中の盗難や置忘れが気になる方は紙本のほうが好ましいかもしれない。
5)ふわふわの丈の長い靴下
検査の合間など、ひんやりとした廊下で足が冷えてくることがあるため、これをポケットに入れておくとリラックス効果にもつながり、重宝する。
3.治療費
さゆりの場合、休職(のちに退職)と検査・治療期が重なってしまったため、治療費のやりくりには本当に神経を使った。役に立った制度、および申請方法は以下の通り。
1)傷病手当金
公的医療保険の被保険者が疾病または負傷により業務に就くことができない場合に、療養中の生活保障として全国健康保険協会、健康保険組合等から支払われる給付のこと。いくつかの給付条件を満たしていることを前提に、休業中の場合、まず雇用主から申請してもらう段取りとなる。患者にはつよい味方の制度だが、給付までに相当の時間(さゆりの場合2か月程度)がかかるため、待機期間中は貯金や他の保険給付金等に頼らざるをえない。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139
2)健康保険
休職後に退社することを余儀なくされたとき、困ったのは健康保険。すぐにでも代わりが必要だったため、役所や健康保険協会へ問い合わせていろいろ確認したところ、さゆりの年収で扶養家族がいる場合、国民健康保険に加入するより従来の健康保険を継続した方が安価なことが判明。ただちに健康保険協会宛「継続申請」を行うともに、さらに高額な治療に備え、「高額療養費限度額適用認定証」(保険証と併せて医療機関等の窓口に提示すると、1か月 の医療機関窓口での支払いが自己負担限度額までとなる)を申請した。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151
3)その他の任意保険
いくつかの小さな保険に加入していたが、確認してみると「入院した場合」や「手術をした場合」に支給されるというものが多く、けっきょく頼りにならなかった。医療の進歩にともない、今後ますます通院治療がふえると予想されるため、できれば健康なうちに「がん一時金」が支給されるものに加入しておくと治療開始時に役に立つことが期待できる。
4.周囲の理解と応援
これにまさる備えはないが、この点いついては後日あらためて別のコラムで紹介することにしたい。
*写真は、ハードな検査の前夜、なかなか寝つけず点けっぱなしにしてしまったリビングルームからの光をうけ、凛と立つテラスのバレエ舞台用花飾り。目覚めてすぐに目にとまり、検査にのぞむ勇気を得た。